第二章 首飾りと情報屋 11
「ようやく着きましたね」
「ああ」
やっと四人は最下層に着いた。少しだけ妖宇香に疲れた様子が見える。
「ここには本来、沢山の警備の方がいるらしいのですが、先ほど未玲さんがほとんど倒して下さいました」
「なら、あとは首飾りだけだな」
「はい!」
道は一本しかなかった。歩いて行って、突き当たった扉を流夏が開けた。
「な、なんだお前たちは!」
中には数人の体格のいい男と、偉そうな太った男がいた。
「あ、私の首飾り!」
妖宇香を見ると太った男は顔を引きつらせた。
「見張りには未玲がいたはずだ!アイツを倒したというのか!?」
「彼はもうここにいませんよ」
「それでも他のヤツらがいたはずだ!」
「いましたね。全員俺が払いましたが」
薙刀を構えて俊輔が冷たく笑う。
「次は貴様の番だ」
流夏が冷たくそう言った。
「貴様、流夏か?」
「ああ」
「ならばちょうどいい!お前の首飾りもいただこう!やれ!」
その言葉を聞いて向かってくる護衛の男達。
「下がっていろ、妖宇香」
「はい!」
「死ね!」
襲いかかってきた男達。何人かを俊輔が薙払う。
「首飾りを渡せ!」
「誰が渡すか」
流夏が自分に向かってきた敵を素早く斬る。
「くっそ!女が相手なら!」
残っていたやつらが全員麗羅に襲いかかった。
「死ね!」
最初に飛び掛かってきた男を麗羅が睨み付ける。それだけで人を殺せそうな、冷たい視線だった。
男達が麗羅に触れる前に、麗羅の周りを風が包んだ。その風は、男達を切り刻んだ。
「私の能力は、風。剣を抜くまでもなかったな」
その時、バタンと扉が開く音がした。
「あ!あの男がいません!」
「面倒なヤツだな」
流夏が追い掛けようと扉に駆け寄った時だった。俊輔が流夏を押さえ付けた。
「何をする!」
「妖宇香さんも、扉から離れて下さい!」
妖宇香が慌てて離れると、扉ごとさっきの男が飛んできた。
「無事、だった、な」
入ってきたのは前髪の長い少年だった。
「情報屋、どうしてここに来た?」
「友人の、ピンチ、だから、な。間に合って、よかった」
事切れた男に歩み寄って首飾りを取った。
「首飾り、だ」
「月影君、来てくれて、助けてくれてありがとう」
「別に」
首飾りを受け取ると妖宇香は嬉しそうに笑った。
「よかったな、妖宇香ちゃん」
「はい!麗羅さん、俊輔さん、本当にありがとうございました!」
深々とお辞儀をする妖宇香を見て、麗羅と俊輔は固まった。
「本当に、流夏さんの妹なんですよね?」
「この可愛らしい感じからは、全くわかりませんね」
「もしかして、昔は流夏さんも可愛かったんですか?」
俊輔に尋ねるが、彼は残念そうに首を横に振る。
「いえ。昔から今のまんまです」
「お前らは俺をどんなヤツだと思ってるんだ!」
流夏が怒鳴ると俊輔はにっこりと微笑んだ。
「素直で可愛らしい少年だと思っていますよ、流夏」
「嘘を吐くな!」
「とりあえず、俺は流夏が大好きですよ」
「気持ち悪い!お前誰だ!」
そんなやり取りを見て妖宇香が楽しそうに笑う。
「よかった、な」
「月影君、今までありがとう」
「今まで、じゃない。これからも、俺は、お前を、助ける。ずっと、変わらない」
「うん、ありがとう」
「だから、お前も、手伝って、くれ」
「わかってるよ、月影君。でもね、お礼を言わせてほしいの。ありがとう」
「別に」
妖宇香が笑うと、月影は照れたように視線を逸らした。