第二章 首飾りと情報屋 13
「月影君、差し入れ持ってきたよ」
妖宇香が月影に弁当のような物を渡した。
「また、扉壊れちゃったの?」
「さっき、な」
月影のその答えに妖宇香はクスクス笑う。
「それは、詩音の分、か?」
「うん。詩音君の分」
「会って、行くか?」
「うん」
月影は直していた扉を床に置いて歩き出した。妖宇香も続く。
二人が入った部屋には、水色の髪の人物が寝ていた。
「詩音君、久し振り」
「何を、持って、きた?」
「お花。たまには女の子らしくしないと」
「女の子、って、言うな。詩音に、怒られる、ぞ」
その時、詩音という人物がピクリと動いた。
「聞こえてるのかな?」
「いや。おそらく、聞こえて、いない」
「やっぱり」
月影は眠り続ける詩音の側にひざまずいた。
「コイツを、目覚めさせる、までは、俺は、情報屋を、やめない」
「私も、助けるよ。だから、絶対に詩音君を助けよう」
「ああ」
二人の会話に反応することなく、詩音は眠り続けた。
「おはようございます、俊輔さん、市川さん」
「おはようございます」
「おはよー!今日、球技大会の出る種目決めるって!」
「球技大会?」
麗羅は首を傾げた。
「もうすぐあるんです」
「そうそう!俺の活躍楽しみにしててね!」
「市川さん、バスケ部でしたよね」
「うん!任せといて!」
「楽しみにしてます」
麗羅がそう言うと修は嬉しそうに二カッと笑った。
「俊輔は何に出るの?」
「おそらくバスケですね」
「え、お前は他に行けよ!俺の出番減るだろ!」
「いいじゃないですか」
「はい、お二人のコンビプレーを楽しみにしてます」
「頑張るぞ!俊輔!」
コンビプレーという言葉に喜ぶ単純な修に俊輔は苦笑し、本音だった麗羅は嬉しそうにした。
「それにしても、不思議ですね」
麗羅の発言に修はキョトンとした。
「昨日と比べて、今日があまりにも平和なので」
「わかります」
「え?何が?昨日も普通に学校だったよね?」
「内緒です。ねぇ、麗羅」
「はい」
混乱する市川に、俊輔がクスリと笑った。麗羅も少しだけ笑った。