第三章 妹と目利きと名もなき鳥 1
いつもと同じ帰り道。麗羅は俊輔と、たまたま部活がなかった修と歩いていた。
「なんかさ、最近二人妙に仲良くない?」
修が急にそんなことを言い出した。
「仲は良いかもしれませんが、あなたが思っているようなことではありませんよ」
「あれか!やっぱり美少女の相手は美少年なのか!?」
「……聞いてませんね」
俊輔の言葉を無視して喋り続ける修。
「やめとけ麗羅ちゃん!こいつ爽やかな笑顔でどす黒いこと言うやつだぞ!」
「あ、はい。知ってます」
「そこは思ってても否定して下さい」
「あ、すみません」
そんな会話をする三人に、背後から忍び寄る影があった。
「麗羅ー!」
「わっ!」
いきなり麗羅が後ろから抱き付かれた。
「久し振り!元気?」
その声の主を麗羅が見る。視界に捉えると、麗羅は目を見開いた。
「万、里……?」
「うん!」
麗羅から離れてニコニコと笑う少女は、髪型は違うものの、麗羅とほとんど同じ顔をしていた。
「うっわ!この子すっげぇ可愛い!誰?」
「久し振りだな、万里(バンリ)」
「うん!」
修をスルーして話が進む。
はしゃぎ続ける少女二人。このままでは状況を把握出来ないので、俊輔は二人の間に入った。
「そろそろ誰なのか聞いてもいいでしょうか?」
「あ、すみません。この子は万里。綾刀万里。私の双子の妹です」
「双子の妹?そりゃ可愛いわけだよ」
修が呟くと万里と呼ばれていた少女はようやく麗羅から視線をずらして二人を認識した。
「あ、麗羅のお友達?」
「ああ。そうだ」
「俺は笹間俊輔といいます。よろしくお願いします」
微笑んだ俊輔を見て万里は目を輝かせた。
「うっわー!めっちゃ美少年じゃん!万里って呼んでね!よろしくお願いします!」
俊輔は万里の元気な反応に少し驚いたが、もう一度微笑んだ。
「俺、市川修!よろしく!万里ちゃん!」
「うん!」
「久し振りの再会なのでしょう?いろいろとお話することもあるはずです。俺と市川はそろそろ行きますね」
「え!嫌だ俺まだ可愛い子達と話したい!」
「何言ってるんです、行きますよ。では麗羅に万里、またお会いしましょう」
「はい。また明日」
「ばいばーい!」
ニコニコしながら手を振る万里に俊輔は近付いた。
「あなた方の当初の目的はお聞きしてますよ。それを踏まえた上で今は友人です。あなたとも親しくなれたら、と思いますよ」
修にだけは聞こえないように囁くと、では、と俊輔はいなくなった。万里はにこにこと俊輔に手を振った。
「麗羅、今はどこに住んでるの?」
「大きな家を建てた」
「じゃあとりあえずそこに行こうよ。早く見たい!」
「ああ、そうだな」
「ホント、久し振りだね!」
「一ヶ月くらいか」
「え?」
万里が疑問の声をあげた。麗羅は首を傾げた。
「あ、そっか。普通は一ヶ月くらいしか経ってないんだね」
「どういうことだ?」
「着いたら、話すよ」
万里は俯いて麗羅の手をギュッと握った。
「私が、遅れて到着した理由」