第一章 夢見る少女と怪盗見習い 8
「ティファはどんなのが好きなんだい?」
換金を終えた三人は、町を歩き回っていた。
「そうね。正直、あまり良い待遇ではなかったからおしゃれがわからなくて」
「そっかぁ」
ピーターは困ったな、と頭を掻いた。
「あっ」
ティファがある店の前で立ち止まった。
「何か気に入ったかい?」
「ここのお店の雰囲気が、好きかもしれないわ」
「よかった!じゃあ、選ぼうか」
ピーターも一緒に選ぶつもりのようだ。しかし、スティーブは店に入ろうとしない。
「俺は先に宿でシャワーを浴びてるからな」
「そう、わかったわ」
「何言ってんのさ!スティーブも何か選んであげなって」
「別にいいわよ」
「よくないね。ほら、この店じゃなくてもいいからさ」
ピーターがそう言ったが、スティーブは返事をせずに歩き出した。
「別によかったのに」
「少しは女の子に慣れたほうがいいと思うんだよ。そっけないだろ?」
今までのスティーブとのやり取りを思い出す。確かに返事はそっけない。
「なるほどね」
「じゃあ、選ぼうか。あ、このスカートとかはどうだい?」
ピーターが差し出したのは水色のフワフワのスカート。
「可愛いわね」
どうやらティファも気に入ったようだ。
「だろ?」
そうして二人は着々と服を選んでいった。会計を済ませた二人は店を出て宿へと向かった。
「それじゃあ、またあとでね」
「わかったわ」
宿に着いて、二人は一旦別れた。
「へぇ、見違えたね。とても似合ってるよ」
着替えて入ってきたティファを見て、ニコニコしながらピーターはそう言った。ティファは得意げに笑った。
「ありがとう。何から何まで悪いわね」
「いいんだってば!ねぇ、スティーブ」
ピーターが見た方をティファも見る。スティーブが壁に寄りかかって立っていた。
「私を見て、何か言うことは?」
ティファはスティーブを見上げながら悪戯っぽく微笑んだ。
「似合ってる」
「ありがと」
「何か買ってきたのかい?」
ピーターがそう言うと、無言でティファに小さな紙袋を差し出した。
「開けてみても?」
「ああ」
紙袋から現れたのはピンクのリボンだった。
「あ、可愛い」
「へぇ、リボン買ったんだ」
「ありがとう、嬉しいわ」
ティファは笑いながら早速リボンをつけた。
「どうかしら」
「思った通りだ。似合ってる」
「ありがとう」
ティファが嬉しそうに笑いかけると、スティーブは目を逸らした。
ピーターは打ち解けつつある二人を嬉しそうに見ていた。
「決めたよ!」
ピーターが突然叫んだ。
「何をだ?」
「まずは団長に会いに行こう!」
「団長?」
ティファは首を傾げ、スティーブは少し驚いた。
「ティファを紹介しよう!」
「平気か?」
「彼女なら平気さ。むしろ気に入ると思うよ」
「まあ、そうだな」
「ねぇ、何の話なの?」
ピーターはニヤッと笑った。
「世界一素敵なサーカス団、ソル・シャドウの話さ!」
「ソル・シャドウですって!?」
ティファもその名前は聞いたことがあった。世界的に有名なサーカス団である。
「あんな有名なサーカス団とあなた達に何か関係があるの?」
「団長と僕らは仲間さ。師匠といた頃のね」
「ムーンシャドウの?」
「だからサーカスの名前が対になってるのさ」
まだ驚いて目をパチパチさせているティファを見て、ピーターは笑った。