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「なんなんだよ。知ってるなら、教えてくれたっていいのによ。
 それに、志奈は家族みたいなもんだ。今更、なかった関係になんかできる訳ねーよ」

 俺は舌打ちすると、志奈達のいる教室に戻ろうと階段を駆け足で降りることにした。

 それを隠れて聞いていた少女は口角を緩ませ、その場を去って行った。

 けれど、少年は当惑していた。

 口では女の発言を否定していたが、本心ではそれはとても正しいことで、そうしなければ自分の身に危機が訪れるのではないのかと思ってしまっていた自分の考えに当惑していたからである。

 心が掻きむしられるような感覚に自分はどちらを選び、どう行動すれば問題が解決するのかを必死に考えたが、答えが出ないままーー少年は教室に着いた。

 少年は教室に着き、待たせていた幼馴染に声を掛けた。

「花摘んできた。遅くなって悪かったな」
「ううん、全然遅くないよ」

 教室を出てから三十分ぐらいなのに、全然遅くないと志奈は言っている。それに無駄に機嫌がいい。

 時間の感覚など人それぞれであって、誰がどう思おうが何も問題はない。

 自分にそう言い聞かせながら、残りの弁当をチャイムがなるまでに食べ終わることに集中した。

 その後の授業を流れ作業のようにこなし、担任がちょっとした雑談をして学校での一日は終わった。

 志奈と一緒に帰ろうと思い、教室を見渡すがどこにも姿がなく、代わりに凛花が俺に駆け寄り、

「那由多、話があるから私と一緒に帰りなさい」
「は? なんでだよ」
「いいから来なさいよ。話は帰りながらでもできるでしょ!
 それとも、帰りながら会話することもできないぐらい馬鹿なの?」
「あぁ、わかったよ」

 こいつの言い方は毎回心底腹に来るが、俺のことを嫌いであろう凛花がわざわざ話がしたいと呼び出したのだ。

 なら、理由は志奈のことだろう。

 それなら、俺が断る理由もないので、渋々凛花と帰ることにした。

真口 祐輔
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真口 祐輔

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