「機縦手、もうちょい高度を下げてくれ」

「判りました」



地面が競り上がってきた頃を見計らって、刀を手にドアに手をかける。

機縦手が驚いて燐慟を見たときには、すでに燐慟は下降を始めていた。


制服がばたばたと風に煽られて、音をたてる。

落下地点では、猿のガルゼレスがこちらに気づかないまま、まだ辺りを見回している。


空中で姿勢を立て直し、鞘から刀を引き抜くと、吸い込まれそうなほど荘厳な刀身が露(あらわ)になる。



「──茜雫(せんな)」



ぽとりと雫のように呟いたと同時に、その刀身が茜色の光を纏う。

陽炎のように揺らめき、夕陽のそれと重なる。

そこでようやくガルゼレスが下降してくる燐慟に気づいたようで、口を開けるや否や、大地を揺るがすほどの咆哮が街中に響き渡る。

片手を振り上げ、燐慟を叩きつけようとするが、



「──遅ェよ」



その剛毛な腕ごと、勢いのまま刀を振り抜く。

白刃が腕に吸い込まれ、剛毛に埋もれる。

あっさりと腕を切断すると、止まることを知らない刃が、左肩から右脇腹までをも斬り裂く。

いとも簡単に斬り落とされたの肉塊が、虚しく地面に転がり落ちる。


その断面から、思い出したように鮮血が溢れ、あっという間に辺りを血の海に変える。


「ゴガァアアアアアッ──!!!」


轟く咆哮。

足を踏み出した瞬間、広がり続ける血だまりに足をとられ、ガルゼレスがぐらりと上体を崩す。

壮佳
この作品の作者

壮佳

作品目次
作者の作品一覧 クリエイターページ ツイート 違反報告
{"id":"nov143222275466478","category":["cat0001","cat0004","cat0008","cat0009","cat0011","cat0015"],"title":"\u8ffd\u61b6\u306e\u30ce\u30b9\u30bf\u30eb\u30b8\u30a2","copy":"\u3053\u308c\u306f \u529b\u3092\u5f97\u305f\u4ee3\u308f\u308a\u306b\u5168\u3066\u3092\u5931\u3044\u3001\u904b\u547d\u3092\u306d\u3058\u66f2\u3052\u3089\u308c\u305f\u5c11\u5e74\u5c11\u5973\u305f\u3061\u306e\u3001\u3068\u3042\u308b\u7269\u8a9e","color":"orange"}