◇ ◇ ◇
きりきりと風に煽られ、軋む枝枝。耐え切れずに落ちていく桜の花びらで、コンクリートの地面はすっかり覆い尽くされてしまっていた。
ダークブラウンの髪の少年の背中を、はるか後方からじっと見つめる双眸が一対。スクールバッグを肩に背負い、新品の制服に袖を通した少年がニヤリと笑う。
「お、見ーつけた」
少年がさも楽しげに、誰に話しかけることなくぽとりと零す。
「榊、燐慟」
柔らかな微笑みとともに、口の端が持ち上がっていく。無邪気さを湛え、蒼く輝く瞳が、スッと細目られた。
ミラクリエ トップ作品閲覧・電子出版・販売・会員メニュー