◇ ◇ ◇
一年四組の教室
その窓際の一番後ろの席に、燐慟は座っていた。
「成績順………いや、それだけじゃないか」
燐慟は教室内を見回す。
このクラスは40人ほどで、男子の方が少し多いぐらいだろうか。
なかでも、五大名家と呼ばれる名家の子女たちがこのクラスに在籍していることは、すでに名簿で判っていた。
どうやらこのクラスには、幹部クラスの子女も多く在籍しているらしい。
かつては神咲家にも劣らぬほどだった榊家も、ある出来事がきっかけで、今や "堕ちた名家" などと蔑まれてしまっているのだが、そのおかげで周りの生徒たちの燐慟への視線は、明らかに嫌悪を含んでいた。
そして、その名を出すだけで皆がひれ伏し、傾倒するほどの権力を持つ神咲家の子息も在籍しているはずなのだが、その席は今、空いていた。
「みなさんは希望の卵です。これからは軍の幹部となれるように、精進してください。また、あの神咲 蓮様と勉学に励めるという光栄を……」
と、女教師が言う。
生徒はそれを、目を輝かせ一心に聞いている。
がらりと扉が開く。
女教師の言葉が途切れ、生徒たちにも緊張が走るのが判った。
「え、なんでこんなに静かなの?」
「こ、これは蓮様。席はこちらで……」
「僕視力いいから、そんなに前じゃなくていいよ。ねぇ君、替わってくれるかな?」
男が燐慟の隣に座っている女生徒に微笑むと、
「は、はい!」
話しかけられた女生徒は、頬を紅潮させながら、急いで荷物をまとめ始める。
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