その晩、天帝の腕に抱かれた華具夜は幸せの絶頂にあった。
長年恋い焦がれていた相手と触れ合い、温め合い、そして結ばれたのだから。
しかしそれはほんとうに短い、うたかたの夢でしかなかった。
朝方になり、突如彼ら寝室の幕が上げられる。
苛烈な朝日と共に乱入したのは継母であった。
継母は華具夜を罵る。そして彼の衣が絵に残る前妻と同じ物であることに気付くと、それを剥ぎとった。
裸となり陽光の下に晒された華具夜は、その正体を見抜かれてしまう。
さすがの天帝も交わった相手が自分の息子である事に驚きを隠せなかった。
だがそんな彼に構うことなく、継母は人を呼び寄せると華具夜を近親を犯した罪人であると断じ、彼を牢へと捕らえさせた。
「帝の子と言えど罪は許されぬ」
継母はそう宣言すると、減刑を求める多くの嘆願を無視し、華具夜を地上へと流刑にする事を決めた。
天帝は息子への刑に口をはさむ事はなかった。それは帝として、すべての者に公平であろうという意識の表れであったが、そこに実子と交わった動揺がなかった訳でもなかった。
華具夜も例え継母の策謀であっても、天帝がそれを認めた以上、その判決に抗おうとはしなかった。
天帝は華具夜の天力を封じるため、彼の額に触れる。
これが父親との最後の触れあいになるであろうことを華具夜は覚悟した。指先から伝わる温もりを、決して忘れぬよう心に刻みつける。
されど天帝の天力は想いを残す事すら許さなかった。
天力を封じられた華具夜は、無力な幼子へと転じさせられると、天界での記憶を失う。そしていまだ牛で車を引く未開地――地上へと流された。
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