野宿は
町での買い物を終え、丁度良い寝床見つけた。
町のほど近くにある、古くから行事などで使われている広場だ。石で作られたステージ以外は何もないが、その分見通しも良い。町からこちらを確認出来なくても、こちらからは町の灯りがわかる。昼は人の気配もあるこの広場まで来る獣はいないだろう。
町との丁度良い距離感と安全さを兼ね揃えた場所。コレットは胸をなで下ろしていた。
ちょうど火をおこし終わったところで、パピーは身をよじり、コロンと懐から転げ落ちそうになった。
すかさずコレットが支えた為、火に飛び込まなくてすんだが、それでも目はまだ開かないらしい。
「起きた?」
「……くぅーん……」
コレットの問いに、丸まっていた首を伸ばす。
そのままコレットの膝に頭を乗せかけた時だ。ハッと何かに気づき、目をパチリと開けた。
「ドラゴンの主食は肉?」
「わん! わん!」
炙られた肉が、炎を少し大きくし音を立てながら色付いていた。
「わん! わん!」
香ばしい匂いまでしてくると、たまらず肉目掛けて飛び込んでいきそうになるパピー。そこを何とか抑えつける。
「ほら、ちゃんと座って。そしたらあげるから」
ドラゴン相手なら生肉で良い気がするが、多少焼いた方が美味い。
パピーを横に行儀よく座らせると、肉を差し出す。
「ほら」
「わん!!」
炎を吐くだけあって、熱さは平気らしい。焼き立てに齧り付くと、ひたすらに咀嚼し始めた。
「ゆっくり食べなよ」
苦笑いしながらコレットも自分の食事に手を付ける。
それを口元まで運ぶと、視線がくっついて来ているのに気が付いた。
「自分の分があるだろ? これはカレーパン。パピーにはそっちの方が美味しいよ」
本当は好物のカレーを食べたかったが、何もキャンプにきた訳じゃない。野宿の場で作る訳にもいかずに、代わりにカレーパンを買って来ていた。
「見ててもダメ」
肉を加えながらもヨダレをたらすパピーにもう一度念押しすると、甘口のカレーパンを頬張った。
「……」
ちらりと横目で見やる。あまりに離れない視線に根負けして、一口だけ食べさせてやると、案の定すぐに吐き出した。
甘口と言えど香辛料の塊みたいなものだ。
もったいない、と叱るとパピーは肩をすくめ反省した。
口直しの肉をもう一枚差し出せば、手ごと頬張るくらいの勢いで食べ出す。料理といえるものではないが、用意した食事をこうも幸せそうに食べられれば悪い気はしない。むしろずっと見ていても飽きない気さえした。
互いの腹が膨らんだところで頭を撫でる。くるりと大きな瞳が振り返ると、もっと撫でろと言うように膝に頭を置いた。
そうしているうちに夜も更けた。どちらともなく大きなあくびをすれば、パピーは自らコレットの胸元に入り眠った。
穏やか過ぎる夜だった。