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「はっ」
飛び起きたとき、京都はもうすぐだった。
フランスとはまったく違う町並みが目に飛び込んで来る。
「これが日本の和……」
近くの交番で薬局の場所を教えて貰い、急ぎ足で向かう。
「ここ……」
京都の名所、金閣寺を模した薬局。
他とは一線を画していた。
「ごめんくだい……」
引き戸を開け、中に声を掛ける。
「はぁ~い」
眠そうな声と共に、くびれた白衣を着た長身の男性がでてきた。
「あなたが、ザン・アディさんですか?」
「そうだけど……」
「お願いです。 日本に居る兄、シルバの居場所を教えてください!」
「そう言われてもねぇ~。こっちもタダってわけには――」
「『埋もれ木に花咲く』こう言えば、教えてくれんですよね?」
「なんでそれを……パウロか、あのやろー」
ちっと舌打ちをすると、頭をポリポリ掻きながら、
「……詳しく聞くよ」
「ありがとうございます」
お辞儀をするマルフェ。
「ふーん。よく分かった。ちょっと待って」
そう言うと、アディは奥に消える。
「お待たせ。残念だけど、今シルバは日本に居ないよ」
「え……どうして?」
「つい先日まで、国際サーカス団の日本公演が各地で行われていたんだ。そのメンバーの中に記憶を失った子が居るんだが、それが恐らくシルバだと思われる」
「なんでわかるんですか?」
「情報屋の網をなめてもらっちゃ困る」
アディはドヤ顔を見せる。
「とにかく、日本には居ないから」
「次の国はどこですか? 教えてください!」
「え~どうしようかな~」
「お願いします!」
「フランス」
「え?」
「聞こえなかった? フランス」
「ありがとうございました!」
お礼を述べマルシェは薬局を出た。
「はぁ~……またただ働きか……」