† 一の罪――堕天使斯く顕現す(弐)
告げ終え、銃声が木霊した直後。
「なァにイキがってんだザコが。はんっ、三人ぶっ殺すのにどんだけ時間かかってんだよ」
吐き捨てるような太い声に、俺は耳を疑った。
(……!? いつの間に――――)
反射的に身構えた先にいた偉丈夫は構えてもいないのに、その圧力が続く動作を許さない。
「いやー、久しいね、林原くん。新しい組織でもご活躍のようで何よりだ」
「けっ。再会を祝してェとこだが、てめェがいるっつーこたァ気に入らん輩どもが出しゃばりやがったかァ多聞丸?」
俺に感知されることなく現れた二人の大男が対峙した。
「お偉いさんのボディーガード、軍から要請があったんだよねー」
「まだクソどもとつるんでやがんのか。ま、誰に頼まれてようがここァ俺が指揮するって決まってんだわ。命令に従わなきゃどうなっか、んなこたァわかりきってる立場だよなァ多聞丸?」
林原、と呼ばれた壮年は、多聞さんに対しても高圧的極まりない。
「おいあんた、んなことが許されると――」
「政府直属にゃゆるされんだよォ! ここァ日本だぞ。従わねェってのか?」
振り向きざまに俺の鼻先へ、赤銅色のトンファーが突きつけられた。先端には銃口が開いている。しかし、撃鉄がない――これもデスペルタル、なのか……?
「のっ、信雄……!」
慌てふためいて三条が駆け寄ってきた。
「ああ、あのメスガキかァ。結構いい女に育ってんな」
得物を解除すると、彼女の顎を掴む林原。
「おい、いい加減に――」
「……体制側と対立しても、なんも得はしないよ」
咄嗟に魔力推進で割って入ろうとしたが、多聞さんに片手で易々と制されてしまった。
「林原くん、そのくらいにしておいてもらえるかな。君も職務中だろう。女の子に気を取られて万が一のことがあったらどうするさ」
口調こそ普段の彼と同じく軽いものの、仲間でも息を呑む目力で前に出る。