† はじまりの罪――常闇の渦中に(参)
なんだかんだで、現在はあいつが上司なので報告する。
「こっちは片づいたぜ。いつまでお前は暴れてんだよ、馬か」
「はぁ……? 手際良くなったからってなに調子に乗ってんの。もう終わって向かってますぅー!」
「こらこら。さすがに失礼でしょ、馬に」
通信機越しに聞こえる反論に、気の抜けた呟きが割り込んできた。
「馬面に言われたくない。っていうか隊――元隊長、どうしたんですか?」
互いを視認して通信を切った三条が、二人の間へ降り立った中年の男に問う。
「君たちが任務を投げ出して不健全なこと始めてないか確認だよ。おじさん前線で体張る戦闘員じゃなくなったし、時間外労働はしない主義なんだけどね」
大柄で筋骨隆々としていながらも、どことなくやつれている上司は淡々と返した。
「……そもそも勤務時間って概念あんすか、この組織」
「上への報告はやっとくから休んでいいよ。若い時の苦労は買ってでもしろ、なんて言う大人は押し売りを正当化してるだけさ」
渡された紙に目を落とす。どうもこれは地図のつもりらしい。
ただ、矢印が一本だけ引かれていて、汚い字で「地図」と書かれている。