† 二の罪――我が背負うは罪に染まりし十字架(参)
「聞いてっか、悪魔! 罪を犯した者は俺が殺す。それも罪なら、俺は背負い続ける。それでも殺し続ける。罪を背負いながら、犠牲になった人の分まで戦い続ける。その過程の罪も全て背負ってゆく……! それが――俺の背負う、罪という名の十字架だ」
「ヒュー。いけてるじゃん。見た目のインパクトに負けてないよー」
多聞さんが差し出してきたガラス片に映っている自分(かれ)に、言葉を失った。
銀に変色した髪は伸び、右眼も彼と同じく深い蒼を湛えている。あたかも俺がルシファーになってしまったかのようだが、その左眼は金色に明滅し、周囲の皮膚には孔雀の羽を思わせる紋様が焼き付いていた。
「どういう理屈なの…………」
「なんでもかんでも理屈で説明できたら、科学は宗教よりも多くの人から信仰されてるんじゃないかな。こんなにイメチェンして帰ったらみんな驚くだろうから、ヴィジュアル系バンドでも始めたってことにでもしてみればどうだい?」
「いやいや携帯も禁じられてるのにありえないでしょ」
「んなことより、とっとと立てよ。ちびったか?」
「へ……?」
俺の顔と差し伸べた手を、交互に凝視する三条。
「そ、そんなわけないもん……! 言われなくても立ちますーっ!」
そう言いつつも、口調とは裏腹にそっと握り返してきた。
「はは、若いっていいねー。ほら、後処理はなんとかしとくから、君はこの場を離れたほうがいい。幸い、彼はご丁寧に結界まで強化してくれてたみたいで、今のところバレてないと思うけどねー」
結界が解かれると、破壊された建物は元々なかった存在(もの)となる。外側に被害が皆無だったという事実を思い返して、これほどの大惨事を引き起こしてなお、彼が全力には遥か遠かったのだと実感させられた。
「お上には誤魔化しとくから二人は先に戻ってな。夜には傾向と対策を話し合おう。もちろん、お説教の後でね」
言われるとほどなく、ハッとしたように手を振りほどき、早足に歩き出す三条。苦笑いする上司に軽く挨拶し、俺も慌てて後を追った。
† † † † † † †
彼らが二手に分かれた後も、主役を奪われて久しい巨大電波塔から、並んで現場を眺望する二つの影。
さすがに数キロも離れていては、多聞も気づかないようだ。
「ククク……いかがでしょうか? 地球の裏側よりいらしてみて」