† 三の罪――死神と演武(ワルツ)を(参)
「いやー、ロジェヴェンに当てるとはたいしたもんだ」
多聞さんに肩を叩かれ、平常心を取り戻す。
「知覚が強化されてるから視えた感じー? 彼の完全上位互換みたいなのがいるんだけど、そういうのには通用しないかもねー」
確かに、あの攻略法を思いついたとしても、今までの俺には、コンマ数秒の合間にやってのけるだけの身体能力がなかった。
やはり、ルシファー(あいつ)の――――
「あなたが対戦相手の二十六位くん……楽そうな相手でよかった」
「らぶりェッ!?」
か細い声と小さな身体。
普通なら怒るような言葉をいきなり投げかけられたが、振り返った先の少女があまりに可憐すぎて、俺の唇は硬直してしまった。そう、たとえるなら雪の精。長い髪と肌はいずれも純白で、人体から生まれたとは思えないほど、完成された美しさだった。
「おやおや、みつきくん。相変わらずなに考えてるのかわかんない顔してるねー。しっかし、さっきの試合できっちり勝ったのに、楽な相手呼ばわりとは厳しいものだ」
「……ほんとのこと言っただけ」
彼女は多聞さんには目もくれず、生気のない瞳と共に、また無神経な発言を浴びせてくる。
「今グサッって音した! 絶対グサッっていった!」
「どうせ後で一方的にグサッってするし」
「……初対面だよね。僕たち初対面なんですよね? いきなりなんなんすか! 訴訟も辞さない」
「……断罪の七騎士、“大鎌”のみつき――三位と二十六位とは、ずいぶんと実力差マッチだね。なんならぼくが戦いたかったなあ」
割り込んできた三条にも、反応を見せない少女。それどころか、その無機質な目は明らかに、その控え目な鼻の頭に止まった虫を見つめている。
虚無――色で表すなら、無色透明。本当にこの子が多聞さんよりも上なんだろうか。
「え、もしかしてぼく無視されてる……?」
「これは必要な時にしか喋らん」
いつ間合いに入ったのか、煙管小僧が数歩横に立っていた。
「ちっ、茅原さん……!」