† 三の罪――死神と演武(ワルツ)を(肆)
「……断罪の七騎士、“大鎌”のみつき――三位と二十六位とは、ずいぶんと実力差マッチだね。なんならぼくが戦いたかったなあ」
割り込んできた三条にも、反応を見せない少女。それどころか、その無機質な目は明らかに、その控え目な鼻の頭に止まった虫を見つめている。
虚無――色で表すなら、無色透明。本当にこの子が多聞さんよりも上なんだろうか。
「え、もしかしてぼく無視されてる……?」
「これは必要な時にしか喋らん」
いつ間合いに入ったのか、煙管小僧が数歩横に立っていた。
「ちっ、茅原さん……!」
呆気にとられるがままに不思議ちゃんを眺めていた三条が、途端に姿勢を正す。
「おお、久しぶりだねー、茅原くん。たしかローマ本部にいたはずじゃ」
「お前たちがあまりに不甲斐ないんでな。あと、これが試合で呼び出されてるからおもりだ」
そう告げると、みつきという少女を煙管で指した。
人形のような子どもと、ふてぶてしい子ども。パッと見、とても組織のトップスリーのうちの二人がいる光景とは思えない。
「では、次の二人。三位、北畠みつき。二十六位、緑川信雄の両名はスタンバイお願いします」
アナウンスを行うのは、日頃の澱んだ声が嘘のような柚ねえ。この人は、いやらしいほどのよそ行きっぷりだ。
そんなことを思案しているうちに、模擬戦用の刀を再び渡された。確かめるように、握り締める。
そうだ。今はただ、眼前の相手を――叩きのめす……!
(おいおい……マジかよ)
当初はこんな華奢な子が全世界の妖屠でも三本の指に入るなんて想像もできなかったが、構えたときの佇まいで、称号に足る実力者だと実感した。
相変わらずボーっとしているように見えて、鎌を手にした彼女は“無貌の死神”という異名に相応しく、一切の隙がない。
俺たちを隔てる距離は、およそ十メートル。生唾を飲み込み、呼吸のタイミングを見計らうのだが――――
「ああ、戦士というより処刑人か」
いや、むしろ大鎌を携えた姿と底知れぬ恐ろしさは、文字通り死神のようでもある。それぐらい、この相手には起伏というものが存在しなかった。
これでは、みつきがいつ動くかも――――
「ッ……お!?」