† 十七の罪――ともだち(伍)
(そんな、遡り過ぎて存在が消えたのか…………)
募る疑惑に、彼の瞳は見開かれる。
「登輝ッ!」
友の名は、暗闇に虚しく木霊した。
しかし――――
「うるさいなー。まだ頭がはっきりしてないんだから、騒がないでよー」
そこに混じっていたのは、聞き覚えはあるが、少し幼くなった声。
「登――輝、なのか……?」
ぼんやりとした視界に浮かぶ姿でも、その身が様変わりしていることは見てとれた。
「どうだい? いけてるもんでしょ」
少年のような顔で、本当の少年さながら爽やかに彼は笑う。
「若返ったの……か…………」
食い入るように見つめる象山。
「……やはりこうなる定めか。あれ程反対したというのに――――」
喉を震わせ、肩を落とす。
「多くの先人が届かなかった奇跡に僅かな期間で辿り着く等、所詮は夢物語だった訳だ。しかも夢で終われば良いものを、中途半端にお前を――」
「そうだねー、たしかに死ななそうって感じはしないなあ」
思い詰める友に反して、茅原の反応は意外なほど朗らかなままだった。
「何故、怒らない? 勝手にこの姿とされた上、もう一生戻ることは出来ないのだぞ」
象山は顔を上げ、強いまなざしで尋ねる。
「ずっと若いままでいられるなんて武人冥利に尽きるし、美容業界が聞いたらうらやましがるよー。これだと十代なかばってとこなのかな。ま、欲を言えば、ここまで若くなくても良かったんだけどね」
「何故だ。実験台とされた挙句、取り返しのつかない失敗をしでかされたというのに、何故そうも――」
「いや、ボクとしては失敗なんかじゃないからいいんだ」
彼の肩に軽く手を置き、茅原は微笑んだ。
「世界のだれよりも大切な親友が、だれよりも早く努力の結晶を見せてくれた――ボクにとっては、これ以上ない成功なんだよ。緑川くん」