何かを掴みたくて探し続けている様で、未だそれが何なのか自分でも判らずさ迷っていた俺達の様な人間に取って、あんたの言葉や行動は喝を与え、曖昧な暗幕を剥ぎ取る答え、啓示だったんだ……!
だからこそ俺も立ち上がろうと想った。危険を敢えて背負って、変わりたいって意志を口先だけじゃなく実証しようと想った。
そうして自分が何者か、何者に成りたいかを、掴もうとしているんじゃないか。己の生きる意味や理由を……。己で形作る道を……。夢や生きる証を……。その為には、まずはあんたと何が何でも逢わなければいけない、と想ったんだ。一種の義務や使命、強迫観念すらあった。
俺も自分だけの生まれた意味や価値が欲しい。その為に、まずあんたが捕まっちまう事だけは絶対に阻止して、共闘して掴み取って行きたいと想ったんだ……。それが理由じゃいけないかい?」
*
もう僕は何も言えなかった。思い掛けない邂逅の末、唐突に手に入れた盟友……。ここ迄一途な男を、信じない訳にも行かなかった。そしてどこか誇らし気なシドは、警察を妨害する迄の経緯を朗々と説明し始める……。
「まず、あの時はあんたの現在地や動向を掴みたかった。しかし、ヘッドギアを捨てたあんたには当然GPS機能は使えない……。そこで視点を切り替え、警察は一体どこ迄詳細を把握しているのか、と言う事に着目したんだ。具体的にどう調べたかと言うと……。
―そう、警察へのハッキングだよ。そこで、警察の捜査は予想以上に核心へ接近していると知り驚愕した。俺は一刻も速くあんたに出会うべきだと焦り、どうすれば警察を妨害出来るかも必死で考えたんだ。そして、警察がマンホール蓋を開封し地下下水処理場に潜行した情報を得て、あんたの逃亡手段や現在地は大体予想が付いて来た……。市街の厳重な包囲網に引っ掛からず、数日間逃げ延びられている理由がな。
あんたは上手く皆の心理の盲点を突いていたな。そこで奴等が、
防犯機能を複数内蔵した特殊機関仕様ヘッドギアを積極的に用い、あんたを追尾するだろうって事も事前に判明した。丸腰のあんたと鬼に金棒の警察じゃ話しにならない。だったらどうやって撃退を図るか……。
すると、奴等の恵まれた特殊機能を逆手に取ってやれ、と閃いた訳さ。現場へ介入した時、まずあんたにヘッドホンを被せたろう?
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