彼の個人辞書には、5500種類のアカウントと1万4000種類のパスワードと言う大量の単語数が登録されているのみならず、ランダムな数字入力にも対応している様だが……。何とかこのツールで認証を突破出来ないものだろうか? 手汗が自覚出来る程に増す中で、僕は指を震わせながら決定ボタンを押した。
瞬間、膨大な単語の羅列が呪文の様に画面上を自動展開し始める……。高性能の機械端末が、寧ろどこか魔術的な様相で生命感を孕み駆動し続ける様を僕は固唾を呑んで見守っていた。
I、my、me、myself、who……
「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
11235 78741165 48478 4561 84564 54k@dg o-t5^2pk gkbn^238
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「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
Psychopath
「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
copy
「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
Persona
「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
ego
「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
Es
「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
ID
「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
Personality
「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
narcissism
「error。ユーザー名及びパスワードが違います」
ハックツールは延々と暗号入力を繰り返す。
……………………………………。
…………………………。
………………。
complex / faith
『認証されました。次の画面が表示される迄暫くお待ち下さい』
やった! 遂に正解の暗号へ突き当たった! これで仮面の様な二重構造のサイトを見破ったぞ!! ―そんな快哉を挙げた次の瞬間だった。僕は政府の要人だけへ向けられた電文に、思わず息を呑みその目を見張った……!! その機密情報の一部を一見した時点で、脳裏に火花が散った様な衝撃を受け暫し呆然とする……。口渇が強まるものの、咽喉の渇きを潤す水を用意する動作の手間さえ惜しい。そして食い入る様に読み解く内、更にその衝撃的な内容の把握は進んで行く。
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