Ⅱ―ⅵ 料理長・ジル
ある者は呼吸するのも忘れ…またある者は完全に動きを止めてしまった。
「おぉ!これはこれは!!キュリオ様っっ!!」
ただ一人、ジルと呼ばれた威勢のよい老人だけが嬉しそうに彼の元へと駆け寄っていったのだった。
「キュリオ様だ…」
「俺はじめて…みた」
「このお方が…」
ジル以外の人間は我も忘れ、恍惚の眼差しでキュリオを見つめている。透き通る雪のような肌に、宝石よりも美しい青い瞳。隙のない流れるような品のある立ち振る舞いは王になるべくして生まれてきた者…唯一無二の、まさにキュリオだった。
動きを止めた料理人たちに目を向けたキュリオは、すまなそうに声のトーンを落とした。
「…邪魔してしまったかな?」