Ⅲ―ⅹ はじめてのみるく
彼女が眠ったあともしばらく抱き続けていたキュリオだが、ジルに酒の差し入れをする約束をしていたことを思い出し、名残惜しみながらももう一度ベッドへと小さな体を横たえた。
「すぐ戻るよ」
ピンク色に染まった頬をひとなですると、キュリオは足早に部屋を出て地下室へと足を向けた。
――――地下へと続く階段を下りていくと、ひんやりとした空気が肌に触れ、食物や飲料を貯蔵するには適した場所であることがよくわかる。
彼の好む茶葉などは離れの蔵に保管されているが、すべて庭の花々から生成した香りの高い良質なものだ。この悠久の国は常春(とこはる)のようにあたたかで、気温も気候も安定している。よって、森や草木はいつでも新緑のような彩を保ち、花もつねに満開だ。
(…精霊の国と悠久は似ているらしいな…)