Ⅳ 悠久の夜
万物に宿ると言われている実態のない精霊だが、極稀にその姿を見かけるときがある。精霊の国と悠久が似ていると聞いたのもその彼からで…
その彼というのはすべての精霊の頂点に君臨する絶対的な存在、そしてキュリオと最も付き合いの長い齢千年を超えた最高位の王なのだった――――
キュリオは数多ある酒の中からジル好みの辛口のラベルを探し出すと、頷いて手を伸ばす。
「これならジルも喜ぶだろう」
かなり年代物で希少な酒だが、キュリオは惜しいとも思わず深いアメジスト色のボトルをその腕の中におさめた。そしてその重みを確かめながら使用人たちの住む宿舎へと向かう。