第三章:空の書、理の書――9
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「繰り返す。テロリストが島内に潜伏している」
魔美は、未だに三番地のスクランブル交差点にいた。
声を掛けているのは、ファレグ隊への指示を飛ばす際に使っている、天空車両に搭載した、無線のマイクだ。
法陣都市の通信を司る、通信管理局に打診した結果、無線は、島内放送仕様に早変わりしている。
「一般島民へ通達しよう。テロリストは主に一〇代後半。男二人と女二人の四人組だ。ついては、屋内への非難、及び、待機を推奨し要請する」
繰り返す。
「一般島民には、屋内への非難、及び、待機を要請する。――然らば、我々は全力を以て、テロリスト確保に乗り出せる。どうか安心してほしい」
これで一先ず、邪魔は入らないだろう。
魔美は思い、髪を掻き上げた。
「続いて、テロリストには自発的な投降を推奨する。君たちが島内に潜伏しているのは、把握している。よって、島外へ通じる交通手段を遮断した。君たちに逃走する方法は存在しない」
告げながら、まだ詰めが甘いと感じる。ようやく手に入れたチャンスだ。確実に、徹底的に、無慈悲なまでに、ものにしなければ、と。
だから、
「君たちに一時間の猶予を与えよう。それまでに投降することだ」
言いながら、猶予とは良く言ったものだと、唇がつり上がった。
これはタイムリミットだ。
「もちろん、逆らうことは許さない。もし、猶予である一時間以内に投降しなかった場合。あるいは、島民及び施設に被害を加えた場合。こちらも容赦はしない」
何故ならば、一時間を超えた場合、致命的な一撃を見舞うのだから。
「こちら側には、〝情報管理局(じょうほうかんりきょく)〟もいる。分かるだろうか? 法陣都市の全情報を管理している機関だ」
情報管理局には、あらゆる情報が取り揃えられている。〝科学区画〟での実験データから住民の個人情報まで。
それが味方になることは、全情報の収得が可能になること。
「つまり、君たちの正体を明かすことは造作もない、と言うことだ」
魔美は、サディズムに笑んだ。
「それが何を意味するか。聡い君たちなら分かるだろう?」