第四章:ドグマの嘘――5
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「胸に手え当てて、ちったあ考えて見ろよ!! オメエが一番、ドグマの近くにいただろうがっ!!」
政は、怖いと思った。
哲也がぶち切れたことではない。ドグマとの時間を思い出すことが。否、彼女の思いに気付けなかった、自分を省みることが、どうしようもなく怖い。
――ワタシは政が良いです。政に守って貰いたい――。
あれは、本当に守って貰いたかったのか。
――信用できるから、に決まっているじゃないですか――。
ドグマは、契約のためじゃなく、心からそう言っていたんだな。
――信じて貰えませんか? だったら、何度でも繰り返します。一〇〇回でも、二〇〇回でも、三〇〇回でも。政が信じてくれるまで、――好きだと――。
それが真実だったなら、
――人肌が恋しかったんですよぅ――。
ってのも、本音なのか?
「フラフラしてねえで、真っ正面から向き合えよ!! ドグマはどんな思いでオメエに嫌われようとしたか!!」
じゃあ、魔美と取引しているとき、こっちの目を見なかったのは、唇を噛み締めていたのは、
――見られなかったのか? 一緒にいたいと願ってしまうから。
「見捨てられるのか!? んな訳ねえよな!! 自分の命を賭けて、オメエの命を守った女を! 悪女と罵って、目を背けられる? オメエはそんな腐ってねえだろう!! 覚悟決めやがれ!!」
「あ、――」
政は、衝動に従って、
「――――――――っ!!」
喉が張り裂けるくらいに、叫んだ。
フィロがビクリと肩を震わせている。哲也が驚きに目を見開いている。構わない。ようやく、目が覚めたから。
「哲也! フィロ! 頼むっ! 一緒にドグマを助けてくれ!!」
哲也が数度瞬きをして、だが、歯を剥くように笑いながら言った。
「アホか。こっちは端からその気だよ」