第五章:魔女――9

          ☆  ☆  ☆

 かふっ! と、魔美の口から苦悶の吐息が漏れた。
 薙ぎ払われた一撃に、肺が耐えられなかったのだ。

 くの字になり、横っ飛びし、魔美は地に伏す。

「魔美さまっ!!」

 契約者であり、恩人でもある魔美の窮地に、シャドーズも動揺を隠せないようだ。

 咳き込み、苦しそうに呼吸する魔美と、彼女の上半身を支えるシャドーズ。

 ユックリと、政が歩み寄り、薙刀の刀身を二人へと向けた。

「……情けを、掛けたつもりなのか? 月詠、政」

 声を震わせ、虚ろな眼差しで、政の眼を見る魔美の口端は、しかし僅かに上がり、笑みの形をしていた。

「その刃で、……我を叩き切れば、全ては終わっていたというのに……」

 挑発のような口振りに、政は迷わず、

「当たり前だろう」

 言い切る。

「アンタだって……いや、誰よりも傷付いていたのは、黒衣崎さん。アンタなんだから」

 黒衣崎魔美は、一連の騒動の首謀者だ。だが、彼女にしか罪がない、とはいえない。
 彼女は彼女で、慕っていたアルバテルを奪われた、被害者でもあるのだ。

「だけど、アンタがした行為は許せないものだ。アンタが今やってることは、過去に、アルバテルって人がやられたことと、同じなんだから」
 だから、
「もう止めよう、黒衣崎さん! このままじゃ、永遠に誰かが傷付いてしまう。負の連鎖は、どこかで食い止めなくちゃいけないんだ!」

 必死の形相で、政は説得する。

「負の連鎖……か、理に、適っているな」

 彼の様子を見上げつつ、魔美は吐息するように笑った。

「ドグマ・ルイ・コンスタンス――」

 彼女はドグマの名を呼び、

「情報処理、完了次第……即、発動に移せ……!」
「承諾しました」

 それでも、司令を下す。破滅に通ずる司令を。

blackletter
グループ名

blackletter

作者

虹元喜多朗

作品目次
作者の作品一覧 クリエイターページ ツイート 違反報告
{"id":"nov14874583703942","category":["cat0001","cat0002","cat0004","cat0006","cat0009","cat0011","cat0012","cat0016"],"title":"\u6cd5\u9663\u90fd\u5e02\u3068\u7406\u306e\u53f8\u66f8","copy":"\u301d\u91cf\u5b50\u30b3\u30f3\u30d4\u30e5\u30fc\u30bf\u301f\u3068\u96fb\u6c17\u56de\u7dda\u304c\u8a18\u3059\u3001\u301d\u9b54\u6cd5\u9663\u301f\u306e\u5185\u5074\u306b\u5b58\u5728\u3059\u308b\u301d\u6cd5\u9663\u90fd\u5e02\u301f\u3002\n\u3000\u5c0f\u7b20\u539f\u8af8\u5cf6\u306b\u6240\u5728\u3092\u7f6e\u304f\u4eba\u5de5\u5cf6\u301d\u9ece\u660e\u5cf6\u301f\u3002\u305d\u306e\u4e0a\u306b\u9020\u3089\u308c\u305f\u8857\u3067\u66ae\u3089\u3059\u301d\u6708\u8a60\u653f\u301f\u306f\u3001\u301d\u8fd1\u4ee3\u5100\u5f0f\u301f\u306e\u7ba1\u7406\u8005\u3092\u76ee\u6307\u3057\u3066\u3044\u305f\u3002\n\u3000\u3042\u308b\u65e5\u3001\u5f7c\u306f\u4e00\u4eba\u306e\u5c11\u5973\u3068\u51fa\u4f1a\u3046\u3002\n\u3000\u5f7c\u5973\u306e\u540d\u524d\u306f\u301d\u30c9\u30b0\u30de\u301f\u3002\u301d\u9b54\u5c0e\u53f8\u66f8\u301f\u3068\u8a00\u3046\u301d\u9b54\u5c0e\u66f8\u301f\u306e\u4fdd\u6709\u8005\u3060\u3002","color":"#4fcbb8"}