第五章:魔女――11
☆ ☆ ☆
「霊脈移動……儀式管理局まで? そんなとこで、何するんだよ?」
哲也が困惑気味に尋ねる。
「理由を話してる暇はない! 早く! オレとドグマを連れて、飛んでくれ! 時間が惜しい!!」
「お、おおう? わ、分かったよ」
政の迫力に気圧された哲也が、勢いに巻き込まれたように唱えた。
『エーテル・フロウ!』
瞬間、四人の姿が黎明警察署の屋上から消える。
続いて四人が現れたのは、台形型の一室だった。
出入口がある面が広く、奥の面が狭い。出入口以外の三面には大型のモニターが取り付けられ、正面にはキーボードの姿が確認できる。
法陣都市の〝近代儀式〟の管理を行う儀式管理局。入念なセキュリティに守られた施設だが、テレポート対策に手は回っていないようだ。
到着後、政が食らい付く勢いで、キーボードに向かい、タイムラグなしでタイプを始める。
「〝魔導回線〟は正常。――〝演算プログラム〟も稼働してるな? よし、いける!」
「おい、政? オメエ、何やってんだ?」
未だに訳が分からないと言った表情で、哲也が尋ねた。
政は、彼に視線を向けないまま、
「対邪眼専用のプログラムを作成するんだよ! この法陣都市の〝近代儀式〟に組み込むために!」
つまり、ドグマのDNAコンピュータを、法陣都市の量子コンピュータで代用する手法だ。
政は血の契約により、理の書の内容を理解している。彼が、その魔術を使用できないのは、専用の演算器がないからだ。
だから、それを今から創るのである。
「んなことできんのか!? それってつまりは、新たな魔導書を書き記すってことじゃねえのか?」
「ああ。オレはこれでも〝儀式科〟の二年生なんだ。一通りのプログラミングは経験しているし、理の書の記述も理解している。理の書には、魔術の理論も載っていて、オレはその使い手だ。簡素な魔導書なら綴れる」
要は、
「理の書の記述を簡易化して、〝魔術プログラミング言語〟で示して、〝バイナリ〟に〝コンパイル〟すればいいのさ! 幸い、〝エディタ〟も用意されていることだしな!」
「お、おう。後半部分サッパリ分からんが……頼むぞ!」