終章:中立地帯――3


          ☆  ☆  ☆

〝黎明学園儀式科〟の廊下を歩む人影があった。

「ええ、と。二年生っつってたな。――てことは、ここか?」

 人影は、二年A組の前で足音を止める。
 政が、三倍の課題と戦う教室の前だ。

 おもむろに、人影の一つ。オレンジ頭の青年が、教室の扉を開いた。

「政? いるかあ?」

 彼の登場に驚いたのは、他ならぬ政だ。

「哲也?」

 政が、応えるというよりは、問い返すように彼の名を呼ぶ。
 さらに、彼の背後からひょっこりと、無表情ながらも可憐な少女が姿を見せた。

「あたしも、いるよ?」
「フィロも? アンタたち何でここに?」

 昨日別れた筈の、魔導司書と契約者。そのいきなりの登場に、驚かない方が難しいかもしれない。
 しかし、二人は平然と答えた。

「何でも何も、オメエに会いに来たんだよ」
「それに、あたしたちも、黎明学園の生徒」
「……そうなの?」

 可能性としては、無きにしも非ず。
 何しろ、二人は魔導司書とその契約者である。それならば、必然、彼らは魔術の薫陶を受けている筈なのだ。

 法陣都市は魔術の街。魔術は必修科目の一つであって、然らば彼らが学生であってもおかしくない。

 まあ、政の気持ちを察するならば、そんな近場にいたなんて。と言うところだろう。
 突如現れた二人組と、普通に会話している政に、教室内の視線が集中する。

 政は、二人に近付きながら尋ねた。

「オレに会いに来たって……、用でもあるのか?」
「俺たちにはねえがな。案内を頼まれたんだよ。一体、どこで連絡先調べたか知らねえが、まあ、恩人の頼みとあっちゃ断れねえし」
「案内? 恩人?」

 全く言ってる意味が分からん。と書かれた表情で、首を傾げる政に、

「似合ってるかどうか、見てほしいんだとよ」

 からかうような口調で、哲也が笑った。

 直後、三人目が姿を見せる。

「じゃ、じゃーん!」

 黎明学園女子生徒の制服を着た、ドグマがそこにいた。

blackletter
グループ名

blackletter

作者

虹元喜多朗

作品目次
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