第9話 余呉湖羽衣伝説
北へ北へと進んで行くと余呉湖がありました。たくさんの白鳥達が余呉湖で水浴びをしていました。
柳の木が立って、枝に衣がかかっていました。すると、白鳥の群れの中で、あのバーコード頭の中年のおっさんが水浴びをしていました。衣と思ったそれはおっさんのふんどしでした。ふんどしを取ってくれとおっさんはモジャ太郎に頼みました。モジャ太郎は汚いふんどしを触るのが嫌なので、見て見ぬふりをしようとしました。しかし、おっさんがあまりにもしつこいのでふんどしを取ってあげました。
すると、どうしたことでしょう。おっさんの姿は見る見る内にカイツブリに変わっていきました。カイツブリはモジャ太郎に
「ああ、とうとう私の正体を見てしまったんですね。そうです。私は貴方に鮎を恵んでもらったカイツブリです。貴方に恩返しがしたくて解説をしていました。でも、正体を知られた今、もう私は貴方の前から去らなくてはなりません。モジャ太郎さん、さようなら。」
と言い、白鳥達と共に飛び去ってしまいました。飛び立つカイツブリの褐色の羽が一枚、モジャ太郎の背中に引っ付きました。まるで自分はいつまでも貴方の側にいるよと言わんばかりに…。
勝手に正体を明かして去って行くカイツブリをモジャ太郎は冷めた目で見ていました。これが後世に伝わる余呉湖羽衣伝説であったとか、なかったとか、それは定かではない…。