真っ黒名物と頼みごと
真っ黒な壁を見つめながら「緑も好きだけど黒もいいな〜。何だか吸い込まれそうな不思議な感じ。ごまペーストで塗ってあったら美味しそうなんだけどな」とリリエがいつものように独り言を言っていると、「お待たせ」とアリサが名物を持ってきた。
綺麗なガラスのトレーに、真っ黒な物体とガラスのティーポットなどが載っている。部屋のドアを開けると思った以上に広い。
二人は早速頂く事にした。「飲み物用意するわね」とアリサはガラスのポットを持った。レモンティーが入っていて、美しく弧を描きながらガラスのティーカップに注がれていく。「これは何?」とリリエはガラス皿に乗った黒くて丸い物体を指差すと「これがさっき話した黒壁商店街の名物よ。こっちが真っ黒肉まん、こっちが真っ黒ジャンボシュー。インパクト大だし味も抜群よ!」とアリサは自慢気に言った。肉まんの匂いを嗅いだ二人はもう我慢できなくなり「いただきます!」とかぶりついた。
「ああ〜美味しかった。ご馳走さま!でもまだまだいけちゃいそう」と、シュークリームも食べ終わったリリエは背にもたれながら今度はレモンティーをすすった。「これはおやつよ、私はお腹いっぱい。良ければ今日の夜ご飯もご馳走するわ」と、アリサは上品にティーカップを片手に言った。「えっいいの?すごく嬉しい!けど、邪魔にならないかな。それに私、いろいろ調べたいことがあるの。もちろん、アリサの頼み事を聞いてから」とリリエは少し戸惑ったが、「さっきの歴史人の話?それともお父さんのこと?」とアリサが口にした言葉に一瞬動きが止まった。「え、何でお父さんのことを・・・」「そうね、いろいろ話したいことがあるけど、リリエは琵琶湖に行ってみた?せっかく長浜に来たのに琵琶湖を見ないなんて勿体ないわよ」と言われ、「琵琶湖に行けば何か話してくれる?」とアリサを見つめた。すると彼女は「もちろん話すわ。でもどこからどうやって話せばいいか分からないし、夜にならないとリリエにお願いするのは難しいの。だから、今夜はここへ泊まってくれないかしら。とってもわがままだけど」と申し訳なさそうに言った。リリエは「分かった。私も宿をとってなくて困ってたから嬉しい!」と答えると「本当に?ありがとう!ところで、今日もし宿がとれなかったらどうするつもりだったの?」とアリサに聞かれると、「もちろん野宿だよ!琵琶湖あたりで寝袋を敷こうと思ってたの。だから、どちらにしても琵琶湖を見に行くつもりでいたよ」とリリエはあっけらかんと答えた。「すごい、リリエらしいな」とアリサは笑顔になり、二人は食器を片付けると琵琶湖へ向かうことにした。