最初の試練
最初の木を後にしたハナビは、突き当たりの背の高い木に到着した。するとそこには、ガラの悪そうなカブトムシが沢山樹液を吸っていた。やがてその中の一匹がハナビに気づくと、全員がこちらの方を見た。「おいおい、またあっちの木からの使いだぜ。ほんと懲りないねえ。」「ほんとほんと。一体今まで俺たちのところへ樹液を奪いに来て生きて帰れたヤツなんていたっけ。」「クックック」ぞっとするような会話にもハナビは動じない。「事情がわかっているなら話は早い。ここは穏便に済まそう。樹液を譲ってくれ。少しだけでいい。」そう言って樹液のところへ行こうとすると、
またもや、ビーゴンくらいの大きさのボスと思われるカブトムシが出てきた。「ワシはこの縄張りの長、カブゴンじゃ。どうしても樹液を空いたかったら、ワシを倒してからにしな。」そう言ってカブゴンは不気味に微笑んだのも束の間、そのハンマーのような角でハナビをいきなり持ち上げた。カブゴンの突然の行動に驚いたハナビは、手足をバタバタさせカブゴンの角からは逃れるも尻餅をついてひっくり返ってしまった。慌てて態勢を立て直すも、ガラの悪いカブトムシから笑い声が起こる。
頭に血が上ったハナビは、今度は自分の角をカブゴンのハンマーめがけて思い切り、大剣のように振りかざす。カブゴンはよろけながらも、姿勢を保ち言った。「お前、なかなかのパワーじゃねえか。名をなんという。」「ハナビだ。」ハナビは誇らしそうに答える。するとガラの悪いカブトムシ達からどよめきがわく。「ふっ、ビーゴンのやつ、こんなチビにその名をつけたか。おい、教えてやろう。俺とビーゴンのやつは同じタイミングで地上に出てきたんだ。その日は今日のように人間どもは花火大会をしていてな。やつは言ったんだ。いつか俺が大物になって、カブトムシに名前をつけられるようになったら、自分の後継者にはハナビと名付けると。あいつはお前を買い被っているようだが、そんなこと俺には知ったこっちゃないね。」そう言ってハナビの方に猛スピードで飛んで向かっていくカブゴンであったが、次の瞬間、カブゴンのその大きな身体は、怪物のような、それはそれは大きなものに捕らえられた。